東京地方裁判所 昭和49年(特わ)297号 判決 1974年7月10日
被告人
本籍
東京都台東区台東四丁目二五番地
住居
東京都台東区台東四丁目八番七号
職業
雑貨商
氏名
穴田哲
年令
五〇年(大正一三年一月三日生)
被告事件
所得税法違反
出席検察官
寺西輝泰
主文
1. 被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処する。
2. 被告人において右罰金を完納しえないときは金四万円を一日に換算した期間労役場に留置する。
3. 本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は東京都台東区上野六丁目四番七号において「マルセ商会」の商号をもって喫煙具等身辺用雑貨類の販売を業としているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四五年分の実際所得金額が別紙第一記載のとおり二七三六万五二〇九円あったのにかかわらず、昭和四六年三月一三日東京都台東区東上野五丁目五番一五号所在の所轄下谷税務署において、同税務署長に対しその所得金額が三八一万五一二七円であり、これに対する所得税額が六一万九三〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一三一五万四六〇〇円と右申告税額との差額一二五三万五三〇〇円を免れ、
第二、昭和四六年分の実際所得金額が別紙第二記載のとおり二三四八万一〇九六円であったのにかかわらず、昭和四七年三月一五日前記所轄下谷税務署において同税務署長に対し、その所得金額が三一八万〇四八六円であり、これに対する所得税額が三五万六八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一〇三八万一五〇〇円と右申告税額との差額一〇〇二万四七〇〇円を免れ、
たものである(正当税額、ほ脱税額算定の経過は別紙第三記載のとおり)。
(証拠の標目)
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書一四通
一、昭和四五年分、昭和四六年分の各所得税額確定申告書二袋(昭和四九年押第七九〇号の19、20)
一、次の者の大蔵事務官に対する各質問てん末書
穴田巴、塩谷敬治、石見精一、島崎芳年(二通)、篠原良一、大谷康男、中野直、中山利男、小島敏市
一、次の者の作成の各上申書
長田昭、川上五作、伊勢勝彦、松村功、岡本正勝、大場幹穂、加藤弘正
一、次の者の作成の各回答書
佐藤重和、渡辺元春、鈴木文一
一、次の者の作成の各証明書
田中司(二通)、斉藤信治(二通)、森田駿(二通)、伊藤則次、小野昭三、久武俶之、松野光成、崎田栄
一、大蔵事務官作成の次の各書面
現金有価証券等現在高確認書、現金有価証券等現在高検査てん末書(二通)、預金残高と受取利息調査書、金銭信託等調査書、減価償却調査書、店主貸勘定調査書、買掛金調査書、借入金と支払利子調査書、出資金調査書、事業主借受金調査書、個人事業税等調査書、特別区民税調査書、生命保険等掛金調査書
一、次の者の作成の各証明書
知久好郎(二通)
一、検察事務官作成の電話聴取書二通および捜査報告書一通
一、押収してある次の各証拠物(いずれも昭和四九年押第七九〇号で、かっこ内はその符号)
領収証等一袋(1)、昭和四五年分総勘定元帳一綴(2)、計算書等一袋(3)、解約済普通預金通帳一冊(4)、領収書等一袋(5)、定期預金利息計算書等一袋(6)、満期保険金受領証等一袋(7)、御見積書等一袋(8)、図面等一袋(9)、メモ等一袋(10)、領収証等一袋(11)、定期預金利息計算書等一袋(12)預金等メモ書手帳二冊(13の1、2)、預金等メモ書手帳一綴(14)、預金メモ入封筒等一袋(15)、定期預金期日管理カード一枚(16)、メモ一枚(17)、昭和四六年度総勘定元帳一綴(18)、昭和四四年分所得税収支明細書一袋(22)、昭和四五年分所得税青色申告決算書一袋(23)、昭和四六年分所得税青色申告決算書一袋(24)
一、被告人作成の「差押還付物件の証明」と題する書面五通
(法令の適用)
1、該当罰条 判示各所為につき所得税法二三八条
2、刑種の選択 いずれも懲役刑と罰金刑を併科
3、併合加重 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項
4、労役場留置 罰金刑につき刑法一八条
5、執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 池田真一)
別紙 第一
修正貸借対照表
穴田哲
昭和45年12月31日
<省略>
<省略>
別紙 第二
修正貸借対照表
穴田哲
昭和46年12月31日
<省略>
<省略>
別紙 第三
ほ脱税額計算書
<省略>